教室の外から立ち聞きするなんて本当はいけない。
でも、噂の大元が親友となれば話は別に。



愛里紗は三人に警戒しながらも、聞き耳に集中させる為にまぶたを閉じた。



「……ってかさぁ、あの二人ウザ過ぎて直視出来ないんだけどぉ」

「きゃはははは!わっかるぅ」


「駒井のぶりっ子加減さー、どうにかならないの?」

「木村も騙されてる一員じゃね?いい加減目を覚ませっつーの」

「ねぇ、駒井って中学からあんな感じ?」


「確かに中学の時も男に色目使ってた。『〇〇くぅ〜ん』…なんつって甘い声出てた」

「うっわっ!あんなのがいいなんて木村も趣味悪いね~」



愛里紗は扉の向こうで立ちくらみがするほどの強い衝撃を受けた。



咲は他の男子に色目なんて使ってない。
あの子達は、咲をよく知らないから好き勝手言ってるだけ。
咲の性格を知らないクセに酷すぎるよ……。




そう言えば、先日ノグから一組の子達が咲の悪い噂をしてたよって聞いたばかり。
直接噂話を耳に入れるまでは、噂話がここまで酷いものだと思わなかった。







「咲の悪口やめてくれない?」



腹わたが煮え繰り返るほど怒り心頭した愛里紗は、一組の扉横からのっそりと姿を現した。