愛里紗は学校の教室に到着。

机の中を覗き込むと、奥の方に財布が入っていた。
安心してホッと胸を撫で下ろす。


机の中に手を突っ込み奥に追いやられた財布を取り出してカバンにしまい、ひと気のない教室を出ると…。
隣の一組から教室に残っている生徒のヒソヒソ話が声が耳に入った。



愛里紗は通り間際に、何気なくチラッと教室内を覗くと、一組には女子三人組が窓際で固まって話していた。


二人は窓に背中を向けて一人は机に座っている。
彼女達は、ワイシャツの第二ボタンまで開けて、ゆる巻きのリボンタイに、アイラインキツめの眉薄め。

世間一般で言われているギャルだ。



素通りしようとしていたが、三人組のうちの一人のひと言が、昇降口に向かおうとしている私の足を止めた。



「今日も木村さぁ、駒井にデレデレしてんの。マジでうざっ」



窓際に立つ一人が、手鏡を片手に指で髪を直しながら、関心なさげに咲の噂話を始めた。



駒井という名字は、私達の学年に咲一人しかいない。
しかも、もう一人は木村って……。
もしかして、彼女達は咲と木村の話をしているのかな。



良からぬ雰囲気を察すると、反射的にサッと扉の裏に身を隠した。
彼女達の話っぷりから陰口かもしれないと思い始めると、扉の向こうから聞き耳を立てた。