一学期の期末テストが終わった。

中間テスト以降、無我夢中で勉強した私の成績は少しだけ右上がりに。

家で母に成績表を見せて何度も交渉してみたけど、母は既に予約してしまった夏期講習を取りやめてはくれなかった。



残念…。
やっぱり成績が少し上がっただけじゃダメなのね。
通うのが面倒だから塾には行きたくないけど、この成績だと行かなきゃいけないパターンなのね。






夏期講習の日程が近づくにつれ気分が落胆していく愛里紗が、夏休みを目前に控えたある日。

いつもと同じく学校から咲と一緒に帰り、駅の改札前でカバンに入れているはずの交通系ICカードを取り出そうと思ってカバンの中に手を突っ込み財布を探していると…。



ないっ。
カバンの中にしまったはずの財布が入っていない。

一瞬、財布を紛失したと思って焦ったけど、最後に触れた瞬間を思い出した。



あー、そうだ。
財布は教室の机の中だ。

ノートで指を切って出血したから財布の中に入れておいた絆創膏を取り出した後、日直で先生に呼ばれて焦って机の中にしまったんだ。
教室まで取りに戻らなきゃ。



「咲、教室に財布を忘れちゃったから一旦学校に戻るね。悪いけどここでバイバイになっちゃう」

「一緒に学校まで戻ろうか?」


「ううん、大丈夫!また明日ね。バイバイ」



愛里紗は改札を通る咲に手を振って、辿って来た道へと足を向けた。