昨日の咲は明らかに様子がおかしかった。


シアタールームで二人肩を並べてDVDを見てる時も。
学校や友達の事など何気ない会話をしていても。
一緒の布団に入って寝ようとしても。
普段通り優しく微笑みかけられた時も…。


私がひとつの事に集中出来なくなるほど、卒業アルバムを奪ってきた時のなんとも言えぬ表情が脳裏に焼き付いていた。

あの時は、まるで死神でも見たかのような恐怖に怯えている目をしていたから。



人にアルバムを見られたくなかったと言っていたけど、アルバムを取り上げるほどの事だったかな。
昔のアルバムを見るくらい全然大した事ないのにね……。

でも、自分の器で物事を考えちゃいけないか。



愛里紗は駅までの帰りのバス内の窓ガラスに映る自分を見ながら、ボーッと物思いにふけっていた。