小刻みに震える指先。
強く抱きかかえられているアルバム。
そして、ぎゅっと目を瞑っている顔面蒼白の咲。



キッチンから持って来たお菓子はカーペットに散乱した。
倒れたコップは空になって、溢れたジュースはカーペットの模様の一部に。



愛里紗はその光景に思わず口が塞がった。




えっ、何……。
卒業アルバムを見てただけなのに、どうしてそんなに取り乱すの?

しかも、今まで見た事のない切羽詰まったような表情。
一体どうしたんだろう。
見られたくないページでもあったのかな。




二人の間に長い沈黙が続いた後…。
咲はハッと我に返り、恐々とした表情筋を緩ませて愛里紗に言った。



「ゴメン………。無理矢理アルバムを取り上げられて嫌な気持ちになったよね」

「ううん、そんな事ない」


「過去の写真は恥ずかしいから人に見られたくなくて」

「こっちこそ勝手に卒アル開いちゃってごめんね」


「ううん」



咲は深いため息をつくと、ゆっくりと立ち上がってアルバムを本棚に差し込む。
気持ちが渦巻いていた愛里紗は、咲の豹変した姿が暫く頭から離れなかった。