咲は意を決して顔を見上げた。

すると、翔は穏やかなムードで話していた先程とは表情が一変。
眉間にシワを寄せて不機嫌な様子を伺わせていた。



「……どうしてそんな事を聞くの?」



咲は威圧的な空気に耐えきれず、焦ってコーヒーカップへと目を向ける。



彼は普段からポーカーフェイスで感情を表沙汰にしたのは今日が初めて。
だから、恐怖で思わず背筋が凍りついた。



「ごめん……、聞かなかった事に…」



初めて見せた凍てつく目つき。
まるで、これ以上自分の領域に入ってくるなと言わんばかりに…。

悔しい事に、忘れられない人への本気度合いが痛いほど伝わってくる。