ーー今日は日曜日で、天気は晴れ。

外は湿気でムシムシしているけど、午後から近所のカフェで翔くんとデート中。



「翔くん、進路はもう決めた?」

「あぁ、俺はS大が第一志望」



今日もたわいもない会話を楽しむ。
翔くんには聞きたい事が山ほどあるから、ほとんど一方的な質問攻めに。


その一方で付近に座っている若い女性客は容姿端麗の彼に指をさしてヒソヒソと噂話。

『モデルじゃない?』とか、『隣にいる子は、彼女かなぁ…』とか。
向かいに座る私の噂まで耳に入ってくる。



日を追うごとに噂話は慣れてきたけど、はっきり言っていい気がしない。

それは私だけじゃない。
同じく噂話が耳に入っている翔くんだって、いつも迷惑そうにイライラしている。




私達が交際を始めてから、一ヶ月弱。
最初の頃は緊張で目線を合わすのが難しかったけど、最近は会話が成立するように。

彼女になったとはいえ、彼はまだ私の事をあまり知らない。
普段から質問がないから自然とそう思った。


この微妙な心の温度差が実質片想いの私を苦しめている。



「S大かぁ……。教育学部あるかな」

「咲ちゃんはK大志望って言ってたよね」


「うん。でも、出来れば翔くんと同じ大学に行きたいな」



こうやって、しおらしく甘えてみても。



「俺と咲ちゃんは夢が違うよ」



彼は一時の迷いもなく境界線を引く。
少しでも気持ちが繋がっていれば、こんな言い方はしないはず。



形では翔くんの彼女になれたけど。
いつか、本物の彼女になれる日が来るのかな…。