すると咲は重苦しい空気を一掃させるかのように、明るい表情で話題をチェンジした。
「実はアルバイトを始めたんだ」
「………え、アルバイト?テスト期間前のこの時期に?」
「…うん。イタリアンレストランで働いてみたくて」
「へぇーっ。咲がイタリアンレストランかぁ。いいね~!」
高校生になってから初めてのアルバイトに働く意欲を湧かせ、目をキラキラと輝かせている咲。
そういえば、前々からアルバイトに興味があるって言ってたっけ。
稼いだお金を毎月貯金して、ある程度貯まったらパーっと贅沢に使ってみたいって言ってた。
でも、咲が働く姿なんて全く想像がつかない。
普段見ているのが学校の制服姿だからかな。
「実はそのレストランでずっと働きたくて求人が出るのを待っていたんだ。…で、最近ようやく募集が出て働ける事になったの」
「ふぅーん。…で、どこのイタリアンレストラン?場所は咲んちの近所?」
アルバイトの話に興味を沸かせてそう問い尋ねたけど…。
「……それは」
「それは?」
「えぇっと……。それは」
咲は何故か再び言葉を濁している。