普段なら話を聞いても幸せそうだなと思う程度。
でも、咲があまりにも自慢するから興味が湧いた。

スカウトされるほどのイケメンなら、写真を見せてもらった方がイメージを膨らませやすいかもしれないね。

だから、聞いた。



「そんなにイケメンなら彼の画像を見せてよ〜。ツーショット写真とか撮ってるんでしょ」



愛里紗はニヤケ眼でそう聞くと、咲の表情は一瞬で曇った。



「……えっ」



別に無理なお願いを言った訳ではないし、困らせる気で言った訳でもない。
それなのに、咲は気まずそうに目線を逸らした。



「…まだ付き合ったばかりだし、彼の写真は撮ってないの。…ごめん」



まるで1分前とは別人のような態度に。



あれ……。
一瞬嫌そうに見えたのは気のせい?
でも、本当に嫌なら彼氏の話なんてしないか。

それなら、差し支えのない質問に変えてみよっと。



「そうだよね。まだ付き合って日も浅いしね。ゴメン、ゴメン。……で、彼は何ていう名前だっけ。前に聞いたっけ?忘れちゃった」

「えっ?!あ…、え……ええっと、しっ……」


「………うん。しっ?」

「…違う。今井くん」


「そう!今井くんって言うんだ」

「う…、うん…」


「モデル並みのイケメンの今井くんの姿が早く見たいな〜。写真を撮ったら絶対見せてね!」


「……う、うん」



彼氏の話題で再び盛り上がると思ったのに、咲は再び暗い表情に戻る。



また同じ反応。
実は彼氏の事をあまり詮索されたくないのかな。



歯切れが悪い返事に違和感を覚えたけど、その時は彼女が何故中途半端な態度をとったのか理由が分からなかった。