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「もしかして……。そこに居るのは愛里紗ちゃんかな?」
神社の本殿の軒下裏に腰を下ろしてうとうとしていると、神社のおじいさんが久しぶりに声をかけてきた。
そこで高校二年生の私はハッと目が覚める。
どうやら過去の思い出に浸った後にそのまま眠り込んでしまったようだ。
「あっ!おじいさん。お久しぶりです。…ご無沙汰してます」
愛里紗は勢いよく立ち上がり、おじいさんに頭を下げた。
「すっかり大人びていたからすぐに気付かなかったよ」
「おじいさんはあの頃とお変わりなくお元気そうで」
「ホッホッホ。ワシは歳をとらないんじゃ」
「あはは。もしそうだとしたら若さの秘訣を教えて下さいね」
おじいさんの笑顔は四年経っても変わらない。
最近は神社からすっかり足が遠退いていたから、久々の笑顔にどこか懐かしさを感じていた。
だけど、おじいさんの顔を見た途端、六年生当時の彼の姿も思い浮かんだ。
「谷崎くんがこの町からいなくなってから、もう五年目じゃのぅ」
おじいさんはそう言って寂しそうに目を細めて池を見つめた。
そう……。
彼を気にかけてるのはおじいさんだけじゃない。
彼との思い出は簡単に忘れる事が出来ない。
時と共に心の傷は少しずつ癒えてきたけど、未だに夢に出てきてしまうほど心がしっかり覚えている。



