引き続き通い続けている神社では、背中を丸めてしゃがみこみ池の鯉を眺めている愛里紗に、おじいさんは気が利いた言葉をかける事が出来ない。


家では、食欲が失せてろくに食事を口にせずに部屋にこもって泣き続けている姿を見た愛里紗の母は、いつか娘が倒れてしまうのではないかと心配していた。


学校では、友達があの手この手を尽くしながら愛里紗を励ましていた。



愛里紗は周りの人間に気を遣ってもらってばかりで悪いと思いつつ、軌道に乗れず不完全燃焼に。
気丈に振る舞っているように見せたが、感情がこもっていない人形のような笑い方が相手にも伝わる。






彼がいない空っぽの毎日。
まるで、夜明けが訪れない砂漠に一人取り残されてしまっているかのよう。

でも、寂しさに負けちゃダメだと思って明日に期待する。



ご飯が喉を通らないから少し痩せた。
泣き過ぎてしまったせいか、彼が街から姿を消した五カ月目に涙は枯れた。



それでも毎日はやってくる。



彼に会えなくなってから日記をつけ始めた。
誕生日に貰った鉛筆と消しゴムを使いながら、まるで彼に手紙を書いてるかのように。


……そう、これは恋日記。
私の初恋はまだ終わっていない。

一日一ページ。
自分が納得するまで日記を書き続けた。



『谷崎くんが大好き』



想いを書き綴った文字は百個以上。
まるで、念仏を唱えるかのように隙間なく埋め尽くした。



でも、日記を書いていたら、日記帳よりも先に小さくなった鉛筆が使えなくなった。

使い物にならなくなった鉛筆ですら捨てる事が出来ないから、彼との思い出が詰まっている宝箱の中にしまった。