勝手な想像だけど、谷崎くんはきっと今まで女子からバレンタインのチョコをもらった経験があるはず。

それなのに、私からのチョコを期待する緊張気味な瞳がたまらなくかわいい!



チョコを待ち構えているかわいい瞳を見たいが為に、ちょっと意地悪をしたくなったけど…。
身体が凍りつきそうなほど風が冷たいから、あまりおあずけしているのも可哀想だと思って、チョコクッキーが入っている紙袋を目の前に差し出した。



誕生日プレゼントをあげたあの日とは違い、彼女として貫禄が出てきたお陰か、今日は凛としながら口を開く。



「谷崎くんの為に頑張ってチョコを手作りしたの。良かったら食べて」



割とストレートに言えた。

すると、紙袋を受け取った彼は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべて紙袋を開き中身を目で追った。



「サンキュー。中の箱を開けてもいい?」

「恥ずかしいけど…、いいよ」



翔は紙袋の中の箱を取り出して早速箱の中を開けると、中のチョコクッキーをゆっくり眺める事なく、手袋を片方外してヒョイと口にほおばった。



「うん、ウマイ!」

「えへへ」



彼はチョコクッキーを次々と口にして、あっと言う間に全て平らげた。
作るのは結構時間がかかったのに、食べるのは一瞬なんだね。



翔の満足気な笑みを見るなり、愛里紗も自然と顔がほころんだ。