雪で濡れぬようにと家から被せてきたビニール袋の中から、お年玉で買った彼へのプレゼントを取り出して、右手で風を切るように真っ直ぐ向けた。



「あのね。全然大したものじゃないんだけど…。これ…、誕生日プレゼント」



口元が緩むほど恥ずかしくて直視できなかったから、つむじを向け手をギリギリまで伸ばしてプレゼントを差し出した。

すると、彼はプレゼントを受け取り、私はプレゼントが離れる感触で下げていた頭を上げる。



彼は傘を首で支え、目の前で袋のリボンをスルスルとほどき包み袋を両手で開けた。
中からは、紺色で手の甲の部分に白く結晶の模様の入った手袋が顔を覗かせる。

彼はプレゼントの手袋を手にした途端、瞳をキラキラと輝かせた。



「お前から誕生日プレゼントなんて超嬉しい!」



彼は興奮した様子で早速手袋をはめて嬉しそうに眺め、両手をこすったり手袋に白い息を吐いたりして、髪に雪がかかってる事に気付かないほど新しい手袋に夢中になっていた。

彼がプレゼントを喜んでくれている姿を見たら、私もつい嬉しくなって頬が緩んだ。




賑やかな二人に気付いた神社のおじいさんは、本殿側から雪道をゆっくり踏みしめて二人の方へ近付く。



「外は寒いから、今からうちで甘酒でも飲んで温まりなさい」

「はーい」

「谷崎くん、寒いからおじいさんちに早く行こう!」



外は凍えるように寒かったけど、照れ笑いをしている私達には、いつも以上に暖かく感じた。





ところが……。

恋人になったばかりの二人の温かくて幸せな日々は長くは続かず。

お別れの日は無残にも刻一刻と迫っていた。