「谷崎くん、もう神社に来てたの?」
「ずっとここに居たけど」
「嘘っ……。いつから居たの?」
「うーんと。詳しい時間は分からないけど、1時間前くらいには到着してたかな」
「私は10分以上前から来てたんだけど」
「…全然気付かなかった」
境内を一周探したはずが、タイミングが悪かったせいか出会えなかった。
不意打ちを食らったけど、彼の手元に目を向けると、手にはほうきとチリトリが。
狭い境内の中で会えなかったのは、お互い移動していた事が原因と思われる。
それは、ほんの些細なズレを起こしていた最近の私達を示しているようで、少し可笑しく思えた。
愛里紗は一旦落ち着きを見せたけど、いざ翔を目の当たりにすると、まるで覚醒してしまったかように再び恋の鼓動が刻み始めた。