「上履きを隠した件をずっとあーりんに謝らなきゃいけないと思っていて…。上履きを隠された時は傷付いただろうし、私自身も名乗り出る勇気がなくて、ずっとモヤモヤして苦しくて…」



ミクは涙を浮かべ胸に手を当てて精一杯の気持ちを込めながら、今日まで辛かった想いを吐き出した。

素直に吐き出してくれた気持ちが、先程まで微動だにしなかった愛里紗の心を揺さぶる。



「大丈夫だよ。上履きは翌日に返してくれたじゃん」

「でも…」


「もう怒ってないよ」



私は許さない強情さよりも、許す寛大さを選択した。

確かにあの時は嫌な思いをしたけど、ミクも苦しい想いを抱え続けていたから、もう上履きの件は終わりにしようと思った。



ミクは安心したのか、瞳に溜まっていた涙がポロポロと溢れ落ちた。
顎へと流れ落ちる涙の一粒一粒は、苦しかった気持ちを洗い流しているシャワーのよう。



「本当にゴメンね」

「いいよ」



和解してから花壇のレンガに腰をかけて少し話しているうちにミクの気持ちが落ち着いていくと、ミクは翔に告白した時の話をした。



「谷崎くん…、好きな人がいるって言ってた。私にはその好きな人が誰だか分かってたけどね」

「………」


「もし、あーりんが谷崎くんを本気で好きなら味方になりたい」

「えっ…、でも……」



ミクは膝に置いている愛里紗の手をギュッと握りしめると、気迫ある目つきでクイっと見上げた。



「頑張って!二人は絶対上手くいく。私はあーりんを応援する。谷崎くんにはずっと笑っていて欲しいから」



そう言って、ミクは二人の恋にエールを送った。


翔との関係が回復して気持ちが前向きになり始めている愛里紗に追い風を送ったのは、ライバルの存在のミクだった。