「いつも来て下さって、ありがとうございます」


森山さんと常連客のように、私たちの間に流れる空気も“嬉”だと思っていた。

でも、

「え、」

わたしの言葉に弾かれたように顔を上げた男性と、初めて目と目がかち合った。


「っ、」


そこに含まれる感情は、どちらかと言えば“驚”で。

意外にもあどけなさが残る端正な顔立ちのハンバーガー男は、パチパチと瞬きを繰り返した後、ぺこりと頭を下げて踵を返してしまった。


…ああなるほど、そういうタイプもあるんだ。

あちらからも“ありがとうございます”の一言でも帰ってくると考えていたわたしは、若干面食らってしまって。


でも、それよりも意外だったのは、

その男性の二重瞼の奥にある瞳が、想像していたよりももっと深く、堕ちていきそうな程に濃い黒色をしていたことだった。