何で見ず知らずの人を家に招き入れたのかと聞かれると、納得いく答えは浮かばない。

ハンバーガー男の夕飯が湿気たハンバーガー1つだから?

独りでご飯を食べても楽しくないと知っているから?


どちらにせよ、いつもわたしが働く店に来てくれるこの男性がハンバーガーだけを夕飯にしていることだけは、いくら何でも我慢出来なかった。


栄養のある食事を摂らなければ元気が出ない。

それは、母がわたしに教えてくれた唯一のことでもあった。



「どうぞ、上がって下さい。汚かったらすみません」


ハンバーガー男と再び歩き始めてから5分も経たないうちに、私たちは家に到着した。

アパートの2階、階段を上がってすぐに見える扉の奥がわたしの家だ。


玄関を開けて一応ただいまと言ってみるけれど、暗闇の奥からは何の返答も返って来なくて。

代わりに、

「お邪魔します」

と呟くハンバーガー男の声が聞こえて、それが何だかわたしの呼び掛けに返答したみたいに聞こえて、少しばかり嬉しくなった。



「寒いですよね、とりあえず暖房つけますね。あ、ジャージ濡れてるなら着替え…わたしのしかないけど、確か奥にサイズ間違えて買った上着が…って、え?」


靴を脱ぎ、大きめの独り言を零しながらバタバタと室内を歩き回っていたわたしは、不意にハンバーガー男から何の反応もないことに気がついて後ろを振り返った。