殺すように、愛して。

 意識が飛び、心臓が止まる寸前だった。首輪を利用して俺を引き寄せ、垂れているという唾液を躊躇なく舌先で掬いながら力を緩めてくれたのは。紛れもなく、死、の、直前、だったのだ。

 黛の手に唾を飛ばしてしまいそうなほど激しく咳き込み、そのまま勢いで嘔吐きそうになる俺の首を、ほんの僅か、息苦しいくらいに緩く絞めて首輪をつけ終えた黛は、可愛い、瀬那、と髪を撫でて俺を抱き寄せた。呼吸をするので精一杯の俺は、抵抗もできず、文句一つ言えず、苦しさに吐きそうになるのを必死に堪えることしかできなくて。俺と番になるまで絶対外さないでね、と黛は髪を撫でていた手で項を隠す首輪に触れ、体を支えるように尾骶骨の辺りに触れていた手で拘束されて力が抜けた俺の手のひらを柔く触った。触って、重ねて、指を絡めた。は、ひ、と変な声が漏れ、掬われた唾液とはまた違う、自分の口内で分泌される新たな唾液が、たら、と落下する。その液体が黛の制服を汚したが、ごめんも何も言えなかった。もう、よく、分からなかった。息が苦しくてたまらなかった。

「瀬那、口が緩んで、唾液、飲み込めないんだね。いいよ、分かった。俺が代わりに飲んであげるから」

 肩で息をしながら俯けていた顔を持ち上げられ、黛の親指が唾液でぬらぬらとした俺の唇をなぞる。そして、乱れた呼吸を整えようと躍起になる俺を、依然として開いた瞳孔で見下ろす黛は、舌で自発的に湿らせた唇を当たり前のように、日頃からそうしているとでも言うように、俺に押し付けてきた。半開きの唇を割って中に侵入し、好き勝手に口内を掻き回す濡れそぼった熱いもの。艶かしく蠢くそれが俺の唾液を絡め取り、生々しく自分の口腔へ連れ込んで嚥下したのが分かった。分かったのに、何が起きているのかは分からなかった。自分の身に、何が起きているのか、分からなかった。