殺すように、愛して。

 ちゅ、と舐めた箇所と同じ所にキスをした黛がどこかへ行くように一時的に離れると、ふ、と背中側が軽くなった。その瞬間、ガクンと膝が折れ、床にへなへなと座り込んでしまったら最後、足に力が入らず、拘束されているのもあるせいか、容易には立ち上がれなくなってしまった。きつく巻かれたネクタイは解けない。くっつけられた、身動きが取れない両腕がストレスだった。

 変わっている黛によって自由を奪われ、焦りに心臓が嫌な音を立て始める。トイレであった一件のように、いや、それ以上に、何かよくないことをされてしまうんじゃないか。両親とはまた別の誰か、黛の手によってできた傷も増えてしまうんじゃないか。不安でならなかった。

 話をするつもりだったのに、生徒会室に足を向けた時点で引っ張られていたのだろう黛のリードを奪えない。どこにいても誰といても、主導権を握るのは黛で。俺は彼にされるがまま。そうならないように自分を強く持っても、薄っぺらい紙を手でガチガチに固めていくように、簡単に丸め込まれてしまうのだ。

「ま、黛、な、何する、つもり……?」

 カラカラに乾いた喉をヒクつかせながら、緩慢な動作で、俺から離れた黛を振り返る。と、それとほぼ同じタイミングで、俺の横で俺と目線を合わせるように屈んだ黛と視線が触れ合った。俺を見る時、黛の瞳孔は高確率で開いている。開いていると瞬時に分かるくらいに、大きく開いているのだ。