殺すように、愛して。

 どうして生徒会室なのか、そこで何を話されるのか、神妙な面持ちの教師に後で職員室に来なさいと言われた時のような緊張感や予測できない不安が押し寄せ、心が押し潰されてしまいそう。その精神的な苦痛が、僅かだが呼吸に影響を与える。

 集中して文字を書いている時や、彼らと会話を交わしている時などはほとんど気にならなかったが、一人になり、自らの足で黛と対峙しようといきむと、肌の上を滑る包帯がギュッと己の体を締め付けてくるかのようだった。襟元から自我を持った包帯の先端が姿を現し、俺の首をぐるぐると何周もして、じわじわと絞めているんじゃないかと思うほどの息苦しさすら覚える。

 グラウンドや校舎の最上階を中心に声や音が耳に入ってくる中、たった一人、誰とも会うことなく生徒会室の前に辿り着いた俺は、自分の用事を今一度頭の中で確認した。黛の用は検討もつかないが、俺の用は彼にルーズリーフを返すことで。あげると俺に与えることに固執していた黛と、ちゃんと会話ができることを願いながら緩く手を握り、目の前の扉を恐る恐るノックする。一般生徒の立ち入りを許しているわけではない生徒会室だ。自然と厳粛な姿勢になってしまった。

「……黛?」

 ノックをしても中からの応答はなく、まだ彼は来ていないのだろうかと小首を傾げたところで、眼前の扉が独りでに開いた。わけもなく、中にいる人の手によってその扉は開かれたのだ。黛、と意味もなく名前を呼ぶよりも先に、あっという間もなく俺は腕を引かれ強制的に室内へ連れ込まれていた。