目の覚めるような強烈な吐き気を感じ、俺はベッドから飛び起きてトイレに駆け込んだ。不整脈にでもなってしまったかのように心拍数が乱れ、便器を前に息を切らしながら嘔吐く俺の口からは、饐えた臭いを放つ濁った黄色の液体が吐出された。

 吐いても吐いても気持ち悪さが拭えない。忘れていたらよかったのに、嫌でも鮮明に浮かび上がる記憶が、俺の体調を専ら悪化させているかのようで。中に出された不快なものが残っていると考えたら、考えてしまったら、吐き気に拍車がかかってしまう。

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 体の内側すら傷つけるように、俺は喉の奥を指先で思いきり突いた。躊躇なんてしなかった。そんな余裕もなかった。父親の精液をどうにか外へ出したくて必死で。今更意味のないのことをしていると分かっていても、何もせずにいる方が壊れそうだった。

 上から下から、どっちでもいい、どっちでもいいから、父親の成分を出して出して出して、全てなかったことにしてしまいたい。それが無理なら、別の誰かに、綺麗にしてほしい。綺麗に、してほしい。誰か。誰か。誰か、じゃ、なくて。黛。黛、が、いい。黛。助けて。助けて。ベータの三人に襲われそうになった時、みたいに。俺は、ここにいる。黛。黛。痛いくらい、殺すくらい、愛して。俺を。俺は。愛されたい、だけ。オメガ、でも、愛して。父親が、中にいても、あ、う、父親、父親、いらない、出て行って、いらない、いらない、いらない。黛。