その日のうちに包帯を購入し、自室に篭って体に巻きつけた。傷が覆い隠されていくことに心が満たされ、安心感を覚えたその瞬間から、俺は包帯を手放せなくなった。常に巻いていないと落ち着かなくなり、包帯がなくなったり包帯を巻いているのを見られたりすると、軽いパニック障害を引き起こしてしまうのだ。それは歳を重ねるにつれて酷くなっていった。包帯を巻く範囲も、量も。

 オメガの体質によるものなのだろう、同年代の男子よりもどことなく非力に見える傷だらけの体を、真っ白な包帯で覆い隠すことが、当時中学生だった俺が編み出した、ぐらぐらとした精神の平衡を保つ唯一の方法だった。

 数々の暴行によってできた痣も、幾つもの生々しい線を浮かび上がらせた手首の傷も、一度全て包帯で隠してリセットして。それから、普通の人間に馴染むようにどこにでもある衣服で着飾る。包帯は、俺の心の安寧を保つための必需品だった。

 高校三年生になった今も、俺は両親に忌み嫌われ、暴力を奮われ、オメガだからという理由で差別され、自分を傷つけ、包帯を巻いて、オメガであることを隠して、まだ一度も来ていない発情期に怯えながら抑制剤を服用して、そうして目立たないように大人しく日々を過ごしていた。

 でも、この日、俺は初めて、発情期を迎えた。それがきっと、獲物を前に茂みの中に隠れて、確実に仕留められる状況になるまで今か今かと虎視眈々と狙っていた獰猛な狼を狂わせる合図だったのだろう。少しずつ、少しずつ、俺は、俺の意思に反して、目を覚ましたその人物に、思いのままに作り変えられていくのだった。