「きっと、ずっと、これからも、どんな瀬那であっても、今みたいに、俺の嫌いな顔してる瀬那であっても、俺には、瀬那だけだよ」
由良の瞳が、純粋で綺麗な生を纏っていたはずの由良の瞳が、暗く悲しく重たく翳る。落ちる寸前で耐えても、足場は悪いまま。またふらついて、今度は耐えきれずに落下。人が、物理的ではないにしろ、足を踏み外して、あるいは自らの意思で、落ちる、その刹那を、ふやけかけている頭で、目の当たりにした気がした。
兄を慕う弟であることをやめるみたいに、そうやって取り繕うことに身も心も疲れてしまったみたいに、由良は力のない表情で俺に手を伸ばして。頬に、触ろうとした。が、すんでのところで手を止め、空気をゆるゆると柔く切るように、少しも触れることなく俺から離れると、出歩いてくるね、と平静を装いながら、彼は俺に背を向けて歩き出した。ゆら、と小さく呼ぶ俺の声は、由良を引き止めるものにはならなかった。俺は由良を、引き止められなかった。由良が死んでも、俺はきっと、死ねなかった。
家に、自分以外の人の気配がなくなり、一人きりになったことを痛感する。由良はいない。いなくなった。どこに行くのかも言わず、出かけてくると、出歩いてくると、出て行った。由良は無気力だった。危うかった。経験したことがあるから分かってしまう。彼は今、なんとはなしに、死にたい、と思っているんじゃないか。そんな、気がする。死に光を感じている。自棄を起こしかけている由良には今、死が纏わりついている。衝動的に、死のうとするかもしれない。自分ばかりを傷つけてしまうかもしれない。由良は、優しくて、繊細で、脆弱で、責任感も強いから。馬鹿で低脳な兄のせいとは思わずに、全部自分のせいだと、自分のせいで狂ってしまったのだと、暗くて、でも明るい死に、呑み込まれてしまうかもしれない。
由良の瞳が、純粋で綺麗な生を纏っていたはずの由良の瞳が、暗く悲しく重たく翳る。落ちる寸前で耐えても、足場は悪いまま。またふらついて、今度は耐えきれずに落下。人が、物理的ではないにしろ、足を踏み外して、あるいは自らの意思で、落ちる、その刹那を、ふやけかけている頭で、目の当たりにした気がした。
兄を慕う弟であることをやめるみたいに、そうやって取り繕うことに身も心も疲れてしまったみたいに、由良は力のない表情で俺に手を伸ばして。頬に、触ろうとした。が、すんでのところで手を止め、空気をゆるゆると柔く切るように、少しも触れることなく俺から離れると、出歩いてくるね、と平静を装いながら、彼は俺に背を向けて歩き出した。ゆら、と小さく呼ぶ俺の声は、由良を引き止めるものにはならなかった。俺は由良を、引き止められなかった。由良が死んでも、俺はきっと、死ねなかった。
家に、自分以外の人の気配がなくなり、一人きりになったことを痛感する。由良はいない。いなくなった。どこに行くのかも言わず、出かけてくると、出歩いてくると、出て行った。由良は無気力だった。危うかった。経験したことがあるから分かってしまう。彼は今、なんとはなしに、死にたい、と思っているんじゃないか。そんな、気がする。死に光を感じている。自棄を起こしかけている由良には今、死が纏わりついている。衝動的に、死のうとするかもしれない。自分ばかりを傷つけてしまうかもしれない。由良は、優しくて、繊細で、脆弱で、責任感も強いから。馬鹿で低脳な兄のせいとは思わずに、全部自分のせいだと、自分のせいで狂ってしまったのだと、暗くて、でも明るい死に、呑み込まれてしまうかもしれない。



