『瀬那、今から、瀬那の家に行くからね。雪野の次は、瀬那だよ』

「あ、いま、から……」

『躾けて調教しながら、瀬那の好きな、楽しくて気持ちいいこと、たくさんしたいね』

「……あ、まっ、黛」

 また、一方的に切られそうな雰囲気だったため、俺は深く考えるよりも先に声を上げて呼び止めていた。そのおかげか、唯一の繋がりを切断されることはなかったが、電話口で狼狽える俺の様子を感じ取るみたいに彼は沈黙する。何か言わないと。呼び止めたのだから。でも。何も言葉が出てこない。妙に頭がふわふわしていて、うまく働いてくれない。黛。黛。待って。待って。ぼそぼそと小さく呟きながら、考えて、考える。今の状況を。

 黛が、今から、家に来る。俺と、由良、の、いる、家。由良。由良。ああ、そう、そうだ。由良が、いる。今日は、由良がいる。両親は、仕事に行っているためいないが、今日は、由良がいる。由良がいるのだ。由良がいるから、今日は、今日は、ダメ、だ。ダメ、なのに、由良がいると認識したら、ドクン、と心臓が大きく跳ねてしまった。第三者がいる中での、遊び、を想像して、想像すると、あ、と喘ぐような声が、息が、漏れた。勝手に煽られる。自分で自分を煽る。どんどん狂っていく。