いつ終わるのか見当もつかない、クラスメートからのレイプのようなそれに抵抗できない状況の中、漂っていたベータの匂いを消し去るほどの甘い匂いが鼻腔を貫いて。脳に痺れを生じさせた。その匂いが鼻を通り抜ける度、発情の症状が悪化していくかのようで。自分の吐息が増え、心臓が跳ね、全身が熱くなり始めた。
ああ、これ、ある、ふぁ、だ。あるふぁ、が、きた。きたんだ。だれか、きた。きて、しまった。
匂いが一層きつくなる。室内に人の気配を感じる。俺を貪る彼らがそれに気づいている様子はなかった。俺だけが気づいていて、俺だけが、また一人増えるかもしれない理性をなくした猛獣に、酷く怯えてしまう。震えてしまう。
体に巻いた包帯の隙間に無理やり指を捻じ込み、素肌に触ろうとする彼らは、空いた片手で頬を撫で、髪を梳き、そうしながら首筋に顔を近づけ、オメガの匂いを堪能するように鼻で空気を吸い込んだ。三人のベータに襲われる俺に近づくように、誰かの足音が、迷いのない足音が、大きくなる。
あるふぁ。あるふぁ。きて。ちがう。こないで。たすけて。ちがう。やめて。
破壊された扉。彼らの隙間から見えるその先。最初からここに来るのが目的だったとでも言わんばかりに姿を現した人物は、俺が想像していた、理性をなくした猛獣とは真逆の、怖いくらい落ち着き払った様子の黛だった。
あ、まゆずみ。まゆずみ、だ。まゆずみ。あるふぁ。
本能的に求めるように黛を見つめる中、彼は表情のない顔で手を伸ばし、ベータの一人の襟首を掴んで引っ張り上げた。濁音の潰れたような声が彼の口から漏れ、そのすぐ後、鈍い音が響き渡る。何が起きたのか理解できないまま、呻く声が空気を揺らし、皮膚と皮膚がぶつかる痛々しい音が二発続いた。ベータの匂いが遠ざかっていた。アルファの匂いが近くなっていた。
ああ、これ、ある、ふぁ、だ。あるふぁ、が、きた。きたんだ。だれか、きた。きて、しまった。
匂いが一層きつくなる。室内に人の気配を感じる。俺を貪る彼らがそれに気づいている様子はなかった。俺だけが気づいていて、俺だけが、また一人増えるかもしれない理性をなくした猛獣に、酷く怯えてしまう。震えてしまう。
体に巻いた包帯の隙間に無理やり指を捻じ込み、素肌に触ろうとする彼らは、空いた片手で頬を撫で、髪を梳き、そうしながら首筋に顔を近づけ、オメガの匂いを堪能するように鼻で空気を吸い込んだ。三人のベータに襲われる俺に近づくように、誰かの足音が、迷いのない足音が、大きくなる。
あるふぁ。あるふぁ。きて。ちがう。こないで。たすけて。ちがう。やめて。
破壊された扉。彼らの隙間から見えるその先。最初からここに来るのが目的だったとでも言わんばかりに姿を現した人物は、俺が想像していた、理性をなくした猛獣とは真逆の、怖いくらい落ち着き払った様子の黛だった。
あ、まゆずみ。まゆずみ、だ。まゆずみ。あるふぁ。
本能的に求めるように黛を見つめる中、彼は表情のない顔で手を伸ばし、ベータの一人の襟首を掴んで引っ張り上げた。濁音の潰れたような声が彼の口から漏れ、そのすぐ後、鈍い音が響き渡る。何が起きたのか理解できないまま、呻く声が空気を揺らし、皮膚と皮膚がぶつかる痛々しい音が二発続いた。ベータの匂いが遠ざかっていた。アルファの匂いが近くなっていた。



