殺すように、愛して。

「あの……、返事、くださ」

『瀬那』

 ビクッと肩が揺れる。俺の言葉を遮るようにして割り込んできたその声に、呼び方に、心臓が、跳ねる。思わずスマホを落としそうになり、慌てて握り直した。驚愕に、跳ねたばかりの心臓が暴れ出す。状況がうまく飲み込めず、声を発する口からは、え、あ、え、と気が動転しているのを一切隠せられていない母音しか出てこなかった。まさか、まさか、彼が出るとは予想外で。変な汗が噴き出してくる。軽いパニックだった。雪野と一緒にいるかもしれない、とは思っていたが、雪野のスマホの着信に出るとは思わなかった。行動が、読めない。声色からも、読めない。それでも、瀬那と呼ぶ声は、俺の思考を強制的に鈍らせていく。

「あ……、ま、まゆずみ……」

『瀬那、あと少しで元通りだよ。瀬那の項、噛んだ奴は、俺がちゃんと処理するから』

「ゆきの、さん、と、いっしょ、に、いるの……?」

『俺がなかったことにするけど、瀬那が俺以外の奴に噛ませた事実は一生残るから、後で、たっぷり、遊んであげるね』

「あ、ま、まって、ゆきのさん、いるなら、つ、つがい、かいしょう……」

『瀬那、俺は、瀬那の項を噛んだ奴は殺すって言ったよね。番を殺すんじゃないよ。噛んだ奴を殺す。だから、番の解消しても、できても、俺は雪野を殺すよ。瀬那の項を噛んだから』

「……え」

『瀬那のせいだよ。俺にはまだ噛ませてくれないのに、運命だからって雪野に噛ませるから、雪野が死ぬ。俺に人を殺すように仕向けた瀬那は悪い子だね。でも、そんな悪いことする瀬那も、可愛いね。俺に構ってほしくて悪さしても、黙って良い子で待っててね』

「あ、ま、まゆずみ……」

『瀬那は、俺の番だよ』

「や、あ、あの、まゆ、まゆずみ、はなし、きいて……、おれ……」

『瀬那、今からでも、俺にされたいこと、考えといてね。俺も、瀬那にしたいこと考えながら、雪野を殺すから』