殺すように、愛して。

 途中で怖気付かないようにさっとスマホを手に取り、画面をタップして操作する。躊躇わずに雪野の番号を押してスマホを耳に当て、途切れることのない、一定のリズムを刻む電子音を聞き続けた。鳴り止まない音。少し待つ。出る気配も感じられない。もう少し待つ。出ない。もう少し。でも、出ない。まだ待つ。それでも、出ない。雪野は出ない。出なかった。

 案の定空振りだな、と早々に諦めて、またしても鳴らした自分から切ろうとした時、今まで響いていた音が、何の前触れもなくぷつりと途切れた。え、と目を見張る。すぐに反応ができない。俺はまだ、通話を切っていなかった。音が、止んでいる。痛いほどの沈黙が広がったが、電話口では確かに人の気配を感じる。何も喋らない。かけた側の俺もまさかの展開に咄嗟に言葉が出てこない。繋がるとは思っておらず、何の言葉も用意していなかったのだ。それでも、無言電話にならないように、なんとか言葉を紡ぎ出す。せっかく繋がったのだから、不審がられて切られるわけにはいかない。

「あ、の、ゆき、の、さん、ですか……?」

 出した声は上擦っていて、掠れていて、片言だった。聞こえただろうか。届いただろうか。伝わっただろうか。電話の相手は未だ無言。俺の声は聞き取れなかったのかもしれないと不安になり、もう一度、意識して声を張って雪野の名前を呼ぶ。でも、まだ、応答がない。いよいよ焦燥感が募り始める。おかしい。雪野なら、すぐに返事が来そうなものだし、出た時にも何か一声があるはずだ。それもなかった。何もなかった。明らかにおかしい。まさか、雪野ではないだろうか。それなら、誰だ。今電話に出ているのは。疑問を感じたばかりのその答えは、すぐに顔を出した。