ふわふわ。ゆらゆら。揺蕩う。気持ちよく沈んでいた意識が自然と浮上し、何かに煽られるようにして目を開けた。瞼を持ち上げた。見慣れた壁の色が映る。大小様々な斑点のある木の模様。俺はそれと向かい合うような形で横になっていた。ああ、目が覚めた、脳が起きた、とまだ靄のかかっている頭で力なく現実を見極めるも、しばらくは起き上がることもせずに、反射による瞬きだけを繰り返した。当然だが、寝ている間の記憶はなく、その時に見るような夢の欠片もなかった。覚えていないだけかもしれないが、俺は夢を見なかった。それほどまでに、深い眠りに落ちていたようだ。
重たい体を徐に起こす。抱いて寝たルーズリーフには皺がついていた。少し散らばっているそれを掻き集めて向きを揃え整える。黛、とまるで口癖のように吐いた四文字は、紙に吸い込まれて消滅した。自然と手が項を触る。何も変わった様子はない。もう一度、黛、と呟く。語彙を失ってしまったかのように、彼の名前ばかりを取り憑かれたように呟く。黛。黛。黛。
寝相によって乱れた服の下の包帯を軽く巻き直し、床に両足をつけた。そして、再び、ルーズリーフに視線を落とす。指先で文字をなぞる。黛。黛。黛。黛ばかり。俺の頭の中は黛ばかり。黛は来ない。来ていない。黛は俺を放置している。彼にその意図はなかったとしても、寂寥感を覚えてしまっている俺はそう受け取ってしまっていた。寝て起きたところで、現実は何一つ変わっていない。変えられない。そんな都合のいい話なんてあるはずもないのだ。
腰を上げ、机の前まで歩みを進める。引き出しに、やっぱり捨てられないルーズリーフをしまって、静まり返っているスマホに目を向けた。折り返しも何もないだろうと思いながら触り、時刻と日付のみが表示された画面を見て、俺が寝ている間にも何も変わったことはなかったのだと思い知らされる。時間だけが過ぎただけだった。既に夕方になっている。階下からは、仕事から帰ってきたのであろう母親の出す生活音が微かに聞こえていた。
重たい体を徐に起こす。抱いて寝たルーズリーフには皺がついていた。少し散らばっているそれを掻き集めて向きを揃え整える。黛、とまるで口癖のように吐いた四文字は、紙に吸い込まれて消滅した。自然と手が項を触る。何も変わった様子はない。もう一度、黛、と呟く。語彙を失ってしまったかのように、彼の名前ばかりを取り憑かれたように呟く。黛。黛。黛。
寝相によって乱れた服の下の包帯を軽く巻き直し、床に両足をつけた。そして、再び、ルーズリーフに視線を落とす。指先で文字をなぞる。黛。黛。黛。黛ばかり。俺の頭の中は黛ばかり。黛は来ない。来ていない。黛は俺を放置している。彼にその意図はなかったとしても、寂寥感を覚えてしまっている俺はそう受け取ってしまっていた。寝て起きたところで、現実は何一つ変わっていない。変えられない。そんな都合のいい話なんてあるはずもないのだ。
腰を上げ、机の前まで歩みを進める。引き出しに、やっぱり捨てられないルーズリーフをしまって、静まり返っているスマホに目を向けた。折り返しも何もないだろうと思いながら触り、時刻と日付のみが表示された画面を見て、俺が寝ている間にも何も変わったことはなかったのだと思い知らされる。時間だけが過ぎただけだった。既に夕方になっている。階下からは、仕事から帰ってきたのであろう母親の出す生活音が微かに聞こえていた。



