殺すように、愛して。

 黛はどこにいるのだろう、もう雪野に手を加えているだろうか、とろくな返事もせずにぼんやりと無責任なことを考える俺に向かって、何か良い案思いついたら言うね、と由良は気を遣うように腰を上げ立ち上がった。それにも答えられずに、黛はどこに行ったのだろう、とこの場にはいない彼に囚われてしまう俺の側から、どことなく傷ついたような、不安そうな、悲しそうな、そんなセンチメンタルな表情を浮かべた由良は離れていった。

 黛のことを考えながら、俺の部屋を後にする由良の背中を眺める。由良は黛ではなかった。由良は由良だった。そこに黛はいなかった。黛の影すらなかった。黛はいない。黛がいない。雪野はまだ死んでいない。項の違和感はまだ消えていない。雪野はまだ生きている。黛はどこかにいる。雪野を生かして、どこかにいる。元通りにすると言った黛は、どこかにいる。どこで何をしているのだろう。俺の黛は。俺の。黛は。どこで。何を。

 部屋に一人になり、すると、やっぱり、死が差し迫ってくるような感覚に陥る。膝を抱えたまま視線を下げ、手に持っているスマホの画面を見るが、それは何の音も発さなかった。着信音も通知音も、ない。同じ番号の履歴がいくつも残っていれば折り返しかけてくるんじゃないかと、俺も由良も淡い期待を抱いていたが、文字通り淡い期待なだけにそんなことは一度だってなかった。もう雪野を説得して番を解消してもらうことは無理だろう。このまま黛に殺してもらうしかない。