殺すように、愛して。

 少しばかりの沈黙。穏やかな由良も流石に呆れていそうで、彼の顔を見られなかった。息が詰まる。俺は黛のことを、本当に何も知らないのだと思い知らされる。連絡先は、黛からは聞かれなかった。俺も聞かなかった。そんな間柄ではなかった。俺と黛は、仲が良いとか悪いとかで済ませられる関係ではなくて。友達とは言い難いし、だからといって、他人行儀なただのクラスメートと言うには、あまりにも淫らな接触がありすぎた。

 何度かキスをした。された。緩く体を重ねた。慰められた。軽いSMプレイに興じた。高揚した。高揚してしまった。攻めて、攻められて、お互いに、高揚してしまったのだ。黛の開いた瞳孔と、自分自身が感じた、抗えなかった多幸感が、同意していないはずのプレイを盛り上がらせた証拠のようで。発情期のせい、だけでは補えそうになかった。彼と俺を繋ぐ、この、淫靡で歪な関係を、何と呼べばいいのだろう。

「……そっか。俺も知らない、から、それなら、また、時間置いて、雪野さんにかけてみよう」

 何度もかけたところで、現状は変わらないかもしれないけど。無駄なんじゃないか、もっと効率のいい方法があるんじゃないか、と頭を悩ませていそうな由良も、分かってはいるのだ。同じことをしていたって何も進展はしないと。雪野が電話に出ない。ではなく、出られないのではないか。何か理由があって。それこそ、黛に何かされて。出られない。スマホを取り上げられてしまっていたら、彼が応答できないのも頷ける。もしそうなら、引かれそうなほどスマホを鳴らしたところで意味はなかった。意味がないのなら、自力で彼らを探し出すか、もう諦めて黛に雪野を殺してもらい、それで番を解消するか、パッと思いついた、極端なその二択のどちらかを選ぶしかないんじゃないか。そして俺は、後者の方に気持ちが寄りかかっていた。