殺すように、愛して。

 気になることも、聞きたいことも、言いたいことも、由良にはきっとたくさんあるだろう。でもそれを尋ねてこないのは、質問攻めにして問い質そうとしないのは、由良なりの気遣いなのかもしれない。また俺が錯乱して暴走してしまわないように。かける言葉一つすら酷く悩ませ無駄な神経を使わせてしまっているみたいで、それならばと気怠い体を徐に起こし、兄さん、と未だ不安そうな、心配そうな、眉尻の下がった表情で緩く顔を上げた由良と視線を絡ませて。自分から切り出すことにした。なあなあで済ませられる問題ではないだろうし、今更隠し通せる内容でもない。何より、由良とは気まずいままでいたくなかった。

「もう、薄々気づいてると思うけど、俺、初対面のアルファに、項、噛まれたんだ」

 運命の番、みたいで。意識して、淡々と、平然と、変えられなかった事実を述べる。由良は何も言わず、ただ静かに、上げた顔を、また、下げた。吐く息が冷たい。口にすることで、やっぱり夢ではないと思い知らされる感覚がした。俯く由良を見ていた視線がすぐに、自分の手元に移る。その手が首に伸び、俺は噛まれて自ら傷つけた項を触った。気絶して生死を彷徨っていた間に、医師が傷を塞いでくれたのだろう、何重にも包帯が巻かれている。

 噛み跡はめちゃくちゃに形を崩しただろうか。医師はそれに気づいただろうか。気づかないわけがないだろうか。俺がオメガであることも、番になったから、させられたから、自傷して、自殺しようとしたことも、医師は察しているのだろうか。