頭を抱え、悶絶。垂涎。酸素を吸っているはずなのに、吸えていないような、息苦しさ。上手く息ができていない。過度の恐怖に、緊張に、理性的ではない、本能的な期待に、細胞一つ一つが、震える。
発情が、俺の気を狂わせる。発情が、周りの気を狂わせる。発情が。発情が。本能を剥き出しにさせる。
扉一枚を隔てた向こう側、ここだ、この中から匂う、とでも言わんばかりに彼らの足が止まった気配がして、心臓が急激に速まった。はぁ、はぁ、と意思に反して荒くなる呼吸を落ち着かせられない。まるで過呼吸に陥っているかのよう。
「誰か、オメガ、で、発情、してるん、だろ……」
誰、とフェロモンに充てられているせいか、途切れ途切れに話しながら俺に向かって言葉を投げる彼らにとっては、俺は顔の見えない誰かで。その、誰か、を、彼らは知りたがっている。その、誰か、の、俺は、彼らにとってのその誰か、になりたくなくて口を閉ざす。知りたい彼らと、知られたくない俺。双方の意思が食い違っていた。
少しの沈黙、誰も喋らない中、発情のせいで、フェロモンのせいで、我慢できずに漏れてしまう互いの吐息がやたらと響いて聞こえた。欲望を我慢するようにごくりと唾を飲むような音すら鼓膜に届く。
いつ、暴走しても、正気を失っても、おかしくない。俺も。彼らも。そういう危ない状況だった。一触即発のような。
息は切らすものの、無言を貫き、尚且つ姿も現さない俺に対して、徐々に苛立ちを募らせ始めた彼らは、誰、誰、オメガだろ、誰、誰、誰、そこにいるんだろ、誰、オメガ、誰、名乗るか出てくるかしろよ、と少しばかり口調を荒くさせた。そうしながら、鍵のかかった扉を、叩く、か、殴る、か、蹴る、音。それが、俺の恐怖を煽った。
発情が、俺の気を狂わせる。発情が、周りの気を狂わせる。発情が。発情が。本能を剥き出しにさせる。
扉一枚を隔てた向こう側、ここだ、この中から匂う、とでも言わんばかりに彼らの足が止まった気配がして、心臓が急激に速まった。はぁ、はぁ、と意思に反して荒くなる呼吸を落ち着かせられない。まるで過呼吸に陥っているかのよう。
「誰か、オメガ、で、発情、してるん、だろ……」
誰、とフェロモンに充てられているせいか、途切れ途切れに話しながら俺に向かって言葉を投げる彼らにとっては、俺は顔の見えない誰かで。その、誰か、を、彼らは知りたがっている。その、誰か、の、俺は、彼らにとってのその誰か、になりたくなくて口を閉ざす。知りたい彼らと、知られたくない俺。双方の意思が食い違っていた。
少しの沈黙、誰も喋らない中、発情のせいで、フェロモンのせいで、我慢できずに漏れてしまう互いの吐息がやたらと響いて聞こえた。欲望を我慢するようにごくりと唾を飲むような音すら鼓膜に届く。
いつ、暴走しても、正気を失っても、おかしくない。俺も。彼らも。そういう危ない状況だった。一触即発のような。
息は切らすものの、無言を貫き、尚且つ姿も現さない俺に対して、徐々に苛立ちを募らせ始めた彼らは、誰、誰、オメガだろ、誰、誰、誰、そこにいるんだろ、誰、オメガ、誰、名乗るか出てくるかしろよ、と少しばかり口調を荒くさせた。そうしながら、鍵のかかった扉を、叩く、か、殴る、か、蹴る、音。それが、俺の恐怖を煽った。



