項を抉るように切り刻んでいれば、次第に目の前が暗く閉ざされていくのを目の当たりにした。全身が重くなり、視界がぐらぐらと揺れて。ぐるぐると回って。あ、と気が遠くなり、一瞬だけ意識が飛んだ間に俺は床に崩れ落ち、倒れていた。握っていたカッターナイフが手から滑り落ちる。見えている銀色の刃には、血がこびりついていて。持ち手にも、俺の手にも、それは付着していた。

 項から大量に流れ出ているであろう血液から漂う粘っこい鉄の臭いが鼻を抜け、眼前が赤黒くなる中、ゆらゆらと揺らめく蝋燭の炎が今にも消えそうになっている映像を見た。幻覚だった。幻覚を見たところで、今更取り乱すこともなかった。ただ、その灯火が消えたら、俺は死ねる、と何の根拠もなしに思い込み、ぼんやりと、当たり前のように、実際はそこにはない蝋燭を眺め、その時が来るのを待ち望んだ。

 うっすらと芽生える期待に応えるように、徐々に瞼が重くなる。意識を保っていられなくなる。頭が回らなくなる。落ちていくように、沈んでいくように、そのまま、俺は、灯りが消えたかどうかを確認することもできないまま、俺は、音もなく、静かに、ゆっくりと、目を閉じた。瞼が落ちた。暗闇。