殺すように、愛して。

 件の日から、両親は俺を露骨に避けるようになっていた。以前までは、俺の姿を見るや否や苛立ちをぶつけるように暴言や暴力を働いていたのに、今となっては腫れ物に触るような態度で。暴言暴力は明らかに減っていた。というより、気味が悪いくらいに何もされなくなっていた。黛の無慈悲で無遠慮な言動が、拷問が、脅迫にでもなっているのだろうか。俺が気絶した後、しばらくして目が覚めてしまった両親は、また、再び、繰り返し、容赦のない黛の手によって何度も何度も殺されかけた、らしいから。俺の瀬那に暴行を加え続けた罪は重いよ、お前らが早く死ねばいいのね、と黛が言うと冗談に聞こえない台詞を吐き捨てながら、無表情で懲らしめ続けていたという。瀬那を鞭で叩いていいのは俺だけだよ、と。

 全て見ていた、見ていることしかできなかった、動けなかった、何もできなかった、と泣きそうな目で、申し訳なさそうな目で、怯えた目で眉を下げながらも、俺の心に寄り添おうとしてくれた由良の口から聞いた話だった。由良は一部始終のみならず、ノーカットで全部を目の当たりにしたのだ。俺が壊れていく様子も、両親が拷問を受ける様子も。狂うこともできずに、気を失うこともできずに、ただ、腰を抜かし震えながら、その光景を傍観していたのだ。見せられていたのだ。見せつけられていたのだ。意図していたのかいないのかは分からないが、由良に対しても、黛は精神的な打撃を与え続けていたのかもしれない。

 その常軌を逸した姿を、この目で見てみたかった。人を殺しかける黛の、凶悪な姿を。見て、みたかった。おかしいのに、変なのに、そんな極悪な言動を目にしたり耳にしたりしたところで怖くなるだけのはずなのに、凶暴な黛の一つ一つの振る舞いを自分の好きなように都合よく想像してしまったら、ドクドクと敏感に反応を示す俺の心臓が昂り始めた。拷問。脅迫。暴行。無表情のまま血みどろになっていく、俺の頭の中の黛。