殺すように、愛して。

 父親は、荒れていた。いつも以上に、荒れていた。ぐわんぐわんと揺れる視界と、口内を満たす血液の味。やめてくださいもごめんなさいも言えず、いつまでも治まらない憤怒を真正面からぶつけられる。息つく暇もなく殴られ続け、何か言葉を発する隙すら与えられなかった。

 思考が酩酊したように本来の機能を放棄する中、由良の俺を呼ぶ声が脳内で円を描き、由良にも助けが必要であることを思い知らされる。兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん。俺よりも、由良が、一番心配だった。由良、由良、由良。

 兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん由良ごめん由良何もしてあげられなくてごめん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん由良由良大丈夫大丈夫だよ落ち着いて兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん由良由良由良大丈夫だから落ち着いて由良ごめん大丈夫だから由良由良由良由良兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん由良由良由良由良由良由良

 崩壊していく。粉々に崩れていく。由良も。俺も。おかしくなる。もう、みんな、みんな、おかしい。父親も。母親も。俺も。由良も。みんな、この家族はみんな、おかしくなった。そのきっかけなんて。俺でしかない。俺が、オメガだから。オメガだから、おかしくなった。全ての元凶は俺で、何度考え直しても行き着く答えは俺で。俺で。俺が。オメガで。オメガだから。オメガ。オメガで。オメガ。オメガ。オメガで。オメガ。オメガ。オメガ。オメガ。発狂。