お前のせいで。俺のせいで。由良は。お前がいるから。俺がいるから。由良は。俺の知らない、知らなかった、家庭内の規則を破った。俺のせいで。俺がいるから。由良は。破った。
ぐるぐるぐらぐらし始める思考。視界。自分のことなのに、自分がどこを、何を見ているのか分からなくなっていたが、それでも、苛立ちを一切隠さない母親の手が、自分に向かって飛んでくるのを目の当たりにする。何もできず、声すら出せず、パニックになって。そのまま打たれてしまいそうになった時、何かが、誰かが、俺の体を、守るように優しく、それでいて強く、包み込んできた。ふわりと鼻腔を擽る柔らかい香りが全身に染み渡り、自分では制御できずに揺れていた心が不思議と凪いでいく。物体の輪郭がいくつも重なって見えていた視界が、ゆっくりと一つの線になって。醜く歪んでいた世界が元通りになった。錯乱して我を失いかけていた俺を導いたのは。
「ゆ、ら……」
「な、なに、何、してるの、由良。離れなさい。離れなさい。そんな汚物に触れるなんて、何考えてるの由良。由良。由良聞いてるの? 離れなさい。そんな奴に触らないで」
由良、由良、由良。離れなさい離れなさい触らないで触らないで。乾いた唇から漏れた俺の声を容赦なく掻き消す母親は、由良由良由良、離れなさい触らないで、と繰り返しながら、俺を打つつもりだった手でお気に入りの由良に触れ、汚物だという俺から無理やり引き離そうとした。あからさまだった。あからさまに、由良のみ、に触れていた。由良が俺を抱き締めているため、俺のみ、を思い切り殴れず、だから、嫌悪も何も抱くことなくベタベタと触れる由良を使って、俺との隙間を広げようとするのだろう。暴行を加えること以外で、絶対に俺には触りたくないと思っているのが見え見えで。気持ち悪いくらいの徹底ぶりだった。実際問題、気持ち悪かった。
ぐるぐるぐらぐらし始める思考。視界。自分のことなのに、自分がどこを、何を見ているのか分からなくなっていたが、それでも、苛立ちを一切隠さない母親の手が、自分に向かって飛んでくるのを目の当たりにする。何もできず、声すら出せず、パニックになって。そのまま打たれてしまいそうになった時、何かが、誰かが、俺の体を、守るように優しく、それでいて強く、包み込んできた。ふわりと鼻腔を擽る柔らかい香りが全身に染み渡り、自分では制御できずに揺れていた心が不思議と凪いでいく。物体の輪郭がいくつも重なって見えていた視界が、ゆっくりと一つの線になって。醜く歪んでいた世界が元通りになった。錯乱して我を失いかけていた俺を導いたのは。
「ゆ、ら……」
「な、なに、何、してるの、由良。離れなさい。離れなさい。そんな汚物に触れるなんて、何考えてるの由良。由良。由良聞いてるの? 離れなさい。そんな奴に触らないで」
由良、由良、由良。離れなさい離れなさい触らないで触らないで。乾いた唇から漏れた俺の声を容赦なく掻き消す母親は、由良由良由良、離れなさい触らないで、と繰り返しながら、俺を打つつもりだった手でお気に入りの由良に触れ、汚物だという俺から無理やり引き離そうとした。あからさまだった。あからさまに、由良のみ、に触れていた。由良が俺を抱き締めているため、俺のみ、を思い切り殴れず、だから、嫌悪も何も抱くことなくベタベタと触れる由良を使って、俺との隙間を広げようとするのだろう。暴行を加えること以外で、絶対に俺には触りたくないと思っているのが見え見えで。気持ち悪いくらいの徹底ぶりだった。実際問題、気持ち悪かった。



