殺すように、愛して。

 信用できるかどうかも定かではない人、何を考えているのか読めない人からの貰い物の首輪に、力を抜くほどの信頼を寄せるべきではなかったのかもしれない。その張本人である黛は、それを知っていて、知っている上で、寧ろわざと、何か不埒な目的があって、誰でも外せるような首輪を俺に与えたのだろうか。どこにでもあるただの首輪を。何も知らなかった俺に。

 黛につけられた首輪で項を死守していたつもりになっていた俺を、彼はどんな目で見ていたのだろう。心の中で嗤っていたのだろうか。ほくそ笑んでいたのだろうか。それとも、高揚していたのだろうか。興奮していたのだろうか。恍惚としていたのだろうか。計り知れない。

 厚そうに見えて実際は薄い、薄すぎるガードに気づかないまま、警戒心を緩めてしまっていた自分が、酷く滑稽に思えた。表情には出さず、頭の中で企図して。結果的な良し悪しは関係なく、自分がこうだと思ったらなんでも臆さず平然と行動に移すような黛に、手のひらの上で好き勝手に転がされていたかのよう。

「兄さん顔青くなってる……。ごめん、俺、余計なこと言った……」

「あ……、だ、大丈夫、だよ。大事になる前に気づけてよかった」

 教えてくれてありがとう。他人から貰った、というか、つけられた首輪を一切疑わずに信用したのがよくなかった。蒼白になっているという顔を俯け、由良から首輪を手渡されながら自嘲気味に言って。頭から抜け落ちていた事実に目が泳ぐのを必死に隠した。誤魔化した。手の中の首輪の円は切断されたままだった。誰でも切断できるものだった。そう、誰でも。

 この首輪は気休め。気休めでしかなかった。身につけることで心理的な安心感を得て、不安や恐怖を強制的に消し去るだけの代物。もしもの時、これは俺を、本当の意味では守ってくれない。ただの首輪で、誰でも外せるものなのだから。