殺すように、愛して。

 恥ずかしさや気まずさ、その中にひっそりと佇む情けなさに早くも耐え切れなくなり、由良から顔を、ふいと、さっと、背けた俺は、少し上を向いて首元を見えやすくすることに集中した。すぐ終わらせるから、と息を吐き、できるだけ俺の肌に触れないようにか、慎重に、首輪だけに自身の指を這わせる由良は、俺が手こずって外せなかった首輪を簡単に解いてみせる。それが普通だった。普通だと思ったのに、輪が切れた首輪を見た由良は、ごめん、今更だけど、とどこか不安げな表情で俺に目を向けて。灯台下暗しのように見落としていた重大な事柄に気づき、戦々恐々とするような言葉を続けた。

「項を守るために首輪つけてるのに、他人の手でこんな簡単に外せていいの」

「……あ」

「これじゃあ、誰だって容易に剥ぎ取れる」

 由良の台詞に血の気が引く。後からとんでもないことを知って肝が冷えるあの焦燥感や恐怖心に似ていた。項を守る首輪、という、言い聞かされた言葉や目に見える物質に安心して、頼って、甘えて、根本的なことが頭から抜け落ちてしまっていたことに、首輪をつけるようになってからもう随分と月日は経っているのに今頃になって気づかされるなんて。失態だった。

 誰でも外せる首輪に意味はない。守れていると思っていたのに、俺はただ、首輪をアクセサリーのように身につけていただけに過ぎなかった。その気になれば他者の手でも外せてしまう頼りない首輪に頼ってしまっていた俺は、自分がオメガであることをむやみやたらに公にしただけ。守れているようで、触れたらすぐにガードが解かれるような緩い首輪に、自分の大事な運命を預けていたのだと思ったら、ひたすらに恐怖でしかなかった。