「名前を知ってる！」


必死になって訴えかける僕に金子と銀太が目を丸くした。


「よし、それを教えてくれ」


銀太はひょうたんを構え直して険しい表情に戻った。


「石田彩花先輩だ！　ここにいる幽霊の名前！」


「オッケー」


金子が小さくうなづき、そしてふたり同時に「石田彩花さん！」と、叫ぶ。


その瞬間、筆の音が止まった。


誰もいなかった空間に白い光が集まってきたかと思うと、その中に一人の女子生徒の姿が浮かび上がってきた。


銀縁のメガネをかけたショートカットの女子生徒。


制服の上に絵の具が散ってカラフルになったエプロンをつけている。


「続きはこの中で描いてくれ」


銀太がそう言うと同時に、先輩の姿がひょうたんに吸い込まれていく。


その後に続くように実際にその場にあったカンバスがガタガタと音を立ててひょうたんに近づいた。


どうなるんだろう？


そう思ったとき、カンバスからもうひとつのカンバスが出現し、それが吸い込まれていったのだ。