祐太郎の指先を視線で追いかけていくと、そこには棚と壁の間に無造作に置かれているカンバスがあった。


布で覆われることもなく、少しほこりを被っている。


隙間から引っ張り出して見てみると、そこにはこの学校を表から見た絵が書かれていた。


青い空に白い雲、そこに灰色の校舎がそびえ立っている様子がなんだか物々しく感じられて軽く身震いをする。


「これが、亡くなった先輩の絵?」


「あぁ」


頷く祐太郎に、僕はカンバスの裏側を確認してみた。


2年4組、石田彩花。


と、書かれている。


石田彩花先輩。


生きていれば高校1年生になっていたはずの人。


見たことのない先輩の姿を思い浮かべて、もう1度絵に視線を向けた。


「最初は雲は描かれていなかったらしいんだ。それが描き足されてる」


「そうなんだ?」


「そう。あと、校舎の陰影とか、コンクリートの小さなヒビなんかもそうだって聞いた」


それが本当香どうかは見ていないからわからないらしい。