答えながら昨日ピアノを弾けなかったことを思い出した。


「どうして吹奏楽部に入らなかったんだ?」


銀太がゴクリと銀杏を飲み込んだ。


食べたのか?


殻のまま。


「僕は大勢で演奏するよりも、ひとりで演奏するほうが好きなんだ」


これは嘘ではなく、本当のことだった。


大勢で演奏するときに幽霊が現れないとも限らない。


そうなると僕がみんなの足を引っ張ることになる。


そう考えると、ひとりで演奏するほうがよほど気楽だ。