その言葉には多少の棘がある。


「そっか。じゃあ仕方ないから帰ろうか」


嫌味とも取れる含みのある言葉。


まずい。


このまま女子を怒らせてしまったら、明日からのふたりの学生生活に支障が出るぞ。


この場を丸く収める方法はないか?


どうにか、納得して帰ってもらうとか、機嫌を直してもらう方法は?


いくら考えてみてもいい案は浮かんでこない。


そもそも僕に女子の機嫌を取ることなんてできない。


背中に冷や汗が流れていったとき、銀太がニッコリと微笑んだ。


「あぁ。そうしてくれると助かる」


銀太の笑顔と、悪気の感じられない真っ直ぐな言葉に女子たちが一瞬静まり帰った。


そして頬をほんのりと赤く染める。


「じゃ、じゃあまた明日ね」


さっきまで不快そうな顔をしていた女子が、照れ笑いを浮かべて帰っていく。


なんだこれ……。


銀太の言葉を聞き入れてゾロゾロと帰っていく集団にまた呆然と立ち尽くしてしまう。


「さ、行こうか」


銀太は何事もなかったかのように歩き出したのだった。