「リン、そんな顔をするなよ。まるでわたしが怖ろしい怪物みたいな目でみているじゃないか……」

 お兄様は、不意に言葉を止めた。

 一瞬だけその視線が、わたしのうしろへと彷徨った。

「わがままを言ってくれるな、わが妹よ。言うことをきいてくれないと、ここでおまえを……。まぁそうならないよう、おまえも努力してくれ」

 お兄様は、わたしに気を配りながら馬の手綱に視線を向けた。

 右手を伸ばそうとした瞬間、「チッ」と小さく舌打ちをする。

 やはり、右腕は相当ダメージを受けているのね。