彼は、林のときとおなじように拳を握りしめてブルブル震えている。その鋭い視線は、パイ生地のクズしか残っていないパイ皿に突き刺さっている。

 ええ、クロード。

 林のときには、あなたの拳と全身のブルブルの理由がわからなかった。
 でも、いまのブルブルの理由はよくわかるわ。

 だけどね、クロード。あなたの異腹の兄と、わたしの姉のやったことなの。彼らにもわけがあるのよ。王都から命からがら逃げだし、食べ物や飲み物もなく、恐怖と不安に怯えながら救いの手を求めて尋ねて来てくれたの。