「あの日は、お兄様とろくに話もさせてもらえなかった。自室に追い払われてしまったのよ。自室ですねて寝ていたんだけど、夜遅くにそっと部屋を出てお兄様に会いに行ったの。すでに屋敷内は静かになっていた。みんな、部屋に戻っているようだった。二階の自室を出てお兄様の部屋へ向かうと、角を曲がって階段の向こう側にある両親の部屋の前に人影があるのに気がついた。廊下の灯りでそれがお兄様だとわかったから、そーっと近づいたわ。近づくにつれ、お兄様は剣を鞘から抜いて立っていることに気がついたの」

 一息つき、また口を開く。