「ひきこもり王子」に再婚したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、仰せのままに従うことにしました

「ロ、ロラン、あなた……」

 そのとき、はじめて気がついた。

 彼の左の肘の上あたりが、変色している。

 グレーのシャツだから気がつかなかったけれど、変色しているのはそこが血に染まっているからに違いない。

「ああ、これは……」

 彼もまた、自分の傷なのにはじめて気がついたかのようにつぶやいた。反射的なのかしら。左腕をひいて二の腕を隠そうとした。