心の迷いが少しあった後、やっぱり母が心配な気持ちが膨らんできていた。
 今までなんとか考えないようにしていた母への会いたい気持ちも同時にどんどん大きくなる。

 そんな気持ちを見透かしたようにユリウス様は、私を見てにこりと微笑んだ。
 そうして私の背中を押すように一つ頷く。

「ユリウス様、私……」
「ああ、それでいいと思う。君は元の世界に戻るのがいい」

 私を心配してくれるその言葉に、私は心がすっと軽くなる。
 一人じゃないことを感じて、今まで誰にも言えなかったことを少しずつ話し始めた。

「母が、あまり体調が良くなかったんです」
「──っ!」
「この世界にくる数日前も体調がよくなく……。元々身体が強くなかったようですが、最近はよく体調を崩していました」
「ユリエ、それは……」

 ユリウス様は私に帰ったほうがいいと言っているのだと、その声色だけでもわかる。
 そうだ、やっぱり母が心配だ。
 私はようやく彼の目を見た。

「私はユリウス様が好きです。それでも、母も好きで……」