童貞を奪った責任



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「気になってたんだけどさ、何でアンタの身体には刺青入ってないの?」


 綺麗な身体でヤクザなんかしているものだから、やっぱり初対面の時に気付けなかった。


 組の構成員の強面たちは、スーツの上からでもがっつり見えていたし、映画でも役者がタトゥーシールだろうけれど貼っていて、ヤクザってそういうビジュアルが基本なんだと思い込んでいた。



「なに、やっと俺の事に関して興味示した感じ?」


「ただ不思議なだけ。」



 抓る指から、擦る指に変わりゆく。私の意識はその厭らしい手付きに移り行き、火照った身体は意識し始める。


 駄目よ、杏!!幾らお互い裸だからって、このタイミングで、この場所でエッチなんか....


 自制心を働かせて耐えていれば、調子に乗った詠斗の指が、お湯の中で上昇して乳房を捕えた。





「別に、入れても入れなくても変わらねーよ。俺は別に組を継ぎたくて居る訳じゃないしな。」


「....?」



 その意味は全く理解出来なくて、首を傾げた。




「杏、お前は俺がヤクザじゃなかったら、潔く俺の元に来るのか?」




・・・その質問には答え兼ねる。



 私は一人の男に縛られたくは無い。その意思は堅く、そして閉じ込めていた昔の苦い思い出を少しだけ思い出させるんだ。



 
「別に応えなくたっていいさ、





どうせ、お前は俺のモノになる運命なんだから。」





 そこまでを言い切った頃には、横並びに居た筈の詠斗は視界の隅から消え去っていて、





「やっぱりここで抱いていいか?」




 なんてふざけた事を抜かす男は、背後に回って私を抱き締めていた。