「先に風呂入れ。」――――押し込められたのは、この屋敷の広さに相応しい程の大きな風呂場だった。
まるで下町の銭湯の如く広い空間は、ちょっと声を張り上げれば木霊してしまいそうなくらいに立派なものだ。
とりあえず詠斗の所為で煙草臭いし、本当は家に帰りたいけれど、簡単には返してくれなさそうだ。
オフィスカジュアルの服を脱いで下着姿になれば、自然と視界に入ってくる斑点だらけの身体。
....昨日は、どっぷり長時間繋がってた。
目的であった“朽果て”も意図も簡単に達する事が出来て、最早何度意識を飛ばし掛けても、直ぐに呼び戻される様に、何度も、何度も....。
思い出しただけで、恥ずかしい。赤面しだす顔を抑えた。
裸になって浴室へと入れば、期待通りの大きな富士山が壁一面に描かれていた。
嗚呼、綺麗だな....。なんて全裸で立ち惚けていると、背後から扉が開く音が聞こえてきて、思わず前面の大事な部分を腕で隠しながら振り返った。
「早く身体洗えよ、風邪ひくだろ。」
「ナチュラルに服を脱ぐな!!」
一緒に入る気満々な詠斗は、ポイポイとスーツを脱ぎ捨てて床に放り投る。そしてあっという間にこちらへとやって来た。
こんなに明るい場所で、身体を見られた事が無いが為に動揺を隠せないが....
もうどうにでもなれ。そう思いながら、しゃがみ込んで我先にと身体を流していると、
「ほら、背中洗ってやる。」
「えっ....。」
手中に収めていたスポンジを奪い取られて、背中に滑らし始めた詠斗は、丁寧に私の背中を流してくれた。
てっきり力任せに、雑な洗浄をされるものだと思っていたから、拍子抜け。身構えていた私の無駄な労力を返せ。



