童貞を奪った責任




 まじで冗談きつ過ぎる。前回訪れた時は私の事を部外者みたいな冷たい視線....というか、まるで化け物でも見てしまった!みたいな視線を送ってきた癖に、いったい何がどうなってるってんだ。




 いくら私が否定したところで、私の味方なんてこの場所に一人も居やしない。




「風呂と、飯の準備は?」


「はいっ勿論整ってます。」



 あの長い廊下を進みながら、先程軒先の先頭に居た一番面構えが良い男が、詠斗にぺこぺこと頭を振っている。


 明らかに詠斗の方が年下なんだろうけれど、これが階級の差?ってやつなのか?



 二人並ぶ姿を眺めながら歩いていると、その男が私の視線に気が付いたのか、顔をこちらに向けて、二カッと歯を見せ笑ったのだ。




――――ッ無理!!!!ヤクザの笑顔なんて言っちゃ悪いけど気持ち悪いし、怖い。なんで笑ったの。


 一瞬チラ見えした金歯が一本。駄目だ...『グフフ』思いだし笑いを堪えるのに必死だった。





「天竜(てんりゅう)てめぇ、ひとの女に目付けてんじゃねーぞ。」

「すっすみませんっ!!」

「いやいや、ちょっと待って、いつ私がアンタの女になったんだ。」

「・・・え?違うんですか?」




 どうにもスルー出来ない状況下で、間に入って否定すれば、呆気らかんと口を開いたアホ面を浮かべた天竜さん?


 だけど、立ち止まった詠斗が私の方に向き直り、上から下までじっくりと舐めまわす様に見つめてきた。




「俺しか受け入れらんない身体な癖に、今更何言ってんだ。」



 その発言に、ボッと熱く燃え上がる顔。何て事言ってくれちゃってんの!?恥ずかしいじゃない。


 天竜さんも、その見た目とは裏腹に赤面しちゃってるし。



 この空気をどうすればよいのやら....。